設立趣意書
設立趣意書

主としてリグニンと多糖から構成されるリグノセルロースは、維管束植物の二次細胞壁の主体をなしており、植物の生育に必須の成分である。さらに、リグノセルロースは、地球上の再生可能資源として最も多量に蓄積している物質であり、今後人類が持続的に生存を続けるうえで必須の資源である。とりわけリグニンは、地上で最多量蓄積している芳香族化合物であり、様々な機能性材料の素材として展開可能な素晴らしいポテンシャルをもつ資源である。

セルロースやヘミセルロースなどのリグノセルロース中の多糖成分の利用については既に社会実装の長い歴史がある一方で、リグニンの高付加価値利用は大規模社会実装に至っておらず、リグニン利用の本格的な社会実装を達成するためには、関連する課題を学術的に解決することが必要不可欠である。さらに、維管束植物におけるリグニンの種々の精緻な生理機能が近年次第に明らかにされるなど、リグニンの機能解析も新時代を迎えている。 既に半世紀以上にわたる膨大な研究の結果、リグニンの生成機構、生理機能、化学構造特性、反応性、分解性、利用特性などに関し多くの知見が蓄積してきている。今や、これら種々の他分野にまたがる研究を有機的・合理的に連携し、リグニンの科学・技術に関する未解決の課題に組織的に対処することが強く求められている。そして、このような組織活動は、科学技術イノベーションに基づく持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて重要な役割を果たすと考えられる。

リグニン研究に携わる者の組織として、世界的に唯一の組織として、わが国にはリグニン討論会が長く存在してきた。すなわち、リグニン研究に携わるわが国の研究者が輪番でリグニン化学討論会を年ごとに運営開催してきた。第1回は1956年に開催され、第29回(1989年)討論会において名称をリグニン討論会に変更したが、2017年の第62回まで回を重ねてきた。このリグニン(化学)討論会は、真摯かつ活発な討論を最大の特徴とし、リグニンの学術及び科学技術の進展に寄与してきた。しかし、分野横断的なより強固な組織の必要性に加え、昨今の社会情勢の下、従来の討論会体制では情報発信などに対する責任体制が不明確であるという課題が強く認識されてきた。

以上に鑑み、第62回リグニン討論会における幹事会にて、リグニン討論会のリグニン学会への発展的組織化につき、衆議一決した。リグニン学会においては、リグニン及び関連物質に関する学術及び科学技術の振興を図り、持続的な社会の発展に資することを目的として活動する。

平成30年10月31日

リグニン学会設立準備委員会
代 表 梅澤 俊明
副代表 福島 和彦
山田竜彦
宮西孝則
委 員 浦木康光
梶田真也
岸本崇生
高野俊幸
堤 祐司
横山朝哉